Introductory text
DSのような、未来的な外観を持つ自動車を市場に投入することは、大胆な賭けといえます。しかしそれは、130万台がいとも簡単に販売されるという結果をもたらしました。
この目覚ましい数字を達成するために、DSは高いプレステージ性を持つ先駆者「トラクシオン」を足掛かりとすることができたのです。同じくベルトーニのデザインによるこのトラクシオンは、DSで使用したハイドロニューマチック・サスペンションを、1954年に15/6Hで試験することを可能にしたのでした(後ろ車軸のみ)。 パワーステアリングと組み合わされたこのサスペンションは、名高いハンドリング性能をもたらし、DSを3つの車輪だけでも走行可能にしたのです。こうしてド・ゴール大統領のDS19は、プティ=クラマールでの狙撃事件の際に、複数のタイヤがパンクしたにもかかわらず、大統領を守ることができたのでした。
揺らぎない成功を手にしたDSは、1967年、ロベール・オプロンによりヘッドライトがリデザインされ、その一方で、数多くの派生バージョンが誕生しました。中でも最も人気が高かったのはID19です。パワーはそれほどでもない代わりに、価格もあまり高くなかったため、ワゴンタイプの「ブレーク」は長年救急車として、また「プレスティージュ」は実業家や国によって使用されました。そして勿論、車体工房のアンリ・シャプロンによりデザインされたコンバーチブル・タイプには、大統領のためのDSおよびSMプレジデンシャルもあります。